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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)892号 判決 1958年6月17日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人代理人山田半蔵、同吉村安次郎、同田村福司の上告理由第一点について。

論旨は企業再建整備法一四条一項の公告は定款に定める方法によるべきであつて、同施行規則九条による公告は同法一四条の公告としての効力を有しないと主張する。けれども昭和二二年八月一三日の改正前の同規則は同法一四条の公告をする方法については何等規定するところがなかつたが、本来右公告は特別管理人のする公告であつて会社のする公告でない以上当然商法の規定の適用を受けねばならないものではなく、昭和二二年八月一三日同法五五条に基いて新たに同規則九条三項を設け店頭公告の方法を定めたからといつて、同規則九条が無効とせらるべき理由はなく、また同法一四条の公告と同規則九条の公告とを別異のものと解すべき根拠もない。所論の点に関する原判決の解釈は相当ということができ、論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は経験則違反をいうが、原判決挙示の証拠によつて所論原判示事実を認定しても経験則に違反するということはできない。その余の所論は証拠の取捨判断、事実認定の非難にすぎず、論旨はすべて採用することはできない。

同第三点について。

論旨は、本件公告がなされた原判示第一会社の本店は登記簿上の本店ではないから本件公告は無効であると主張するが、原判決の認定事実によれば、上告人は当時右本店が江東区にあつたことを了知していたのであり、さらにそれが大田区に移転した際には株主及び取引先に通知したというのであるから、右江東区について大田区所在の本店の店頭をもつて同規則九条にいう店頭と解するを妨げない。原判示には所論の違法はない。

同第四点について。

論旨は原判決の認定したような公告では法規の要求する公告にはならないと主張するけれども、原判決の認定事実によれば、原判示タイプライター印書の公告文書は判示第一会社本店(江東区ではコンクリート造二階建ビル内の一部に、大田区に移転後は東京海上ビル四階にそれぞれ本店があつた)の経理部入口に貼付されこの経理部入口内側には会社本店受付が置かれていたというのであるから、右公告文書の貼付されていた場所は会社に来訪する人その他不特定多数人の目につく場所であるというに足り、原判決がこれを店頭と解し、判示公告は店頭に掲示して有効になされたものとしたのは相当である。論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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